【第104期講座】2010年10月-2011年02月

田中 ちひろの講座リポート


 イタリア・ミラノ在住の田中ちひろ氏は、最新の人間科学に基づく脳と身体の使い方について専門用語を多用せずに誰にでもわかりやすく解説し、より豊かな人生を創造するための実践指導をしておられる。
  その活動の場はアメリカ、ヨーロッパ、日本というグローバルなもので、これまでカウンセリングやコーチングによって6000人以上の人々のストレスを解消してきた。
  「ストレスは捨てられる」というテーマはとても刺激的だ。この言葉に示されているのは、「私たちはストレスを自らの意思で持っているのだから、そのストレスは必ず捨てられる」という意味でもある。田中氏によれば、ストレスに苦しむのは私自身の受け止め方や考え方、感じ方に原因があると指摘する。だからこそ必要のないストレスは自ら捨ててしまわなければならないし、捨てることができるのだという。
田中氏は、活動の場がアメリカ、ヨーロッパ、日本という多国籍多人種にわたっているため、感じ方や考え方の違い、民族や人種や国家の違いを文化の違いと捉えて人間研究をしてきたという背景がある。そこで同じ日本人であっても個性が違い、考え方や感じ方が違うのは、必ずそこにカルチャー(文化)差があるとして尊重しながら、お互いの文化を交流することでより豊かな暮らしや日々の創造活動がなされていくべきだと指摘する。
  また個人のタイプを分析することで、組織における人間関係やストレスがどのように起こるのかも予測できるとして、人間科学を学ぶことの意義と価値を強調している。

■ストレスゼロテクニックへのアプローチ
 田中メソッドともいうべき「ストレスゼロテクニック」は、最新の人間科学に基づいた脳と身体のシステムを組み合わせて感情をコントロールする技法として構築されている。
  このテクニックを駆使すれば、自在にストレスをコントロールすることができ、瞬時にストレスを消し去ることができるという。ストレスに悩み苦しむ理由がわかり、脳と身体をどう使えばよいのかを知ることによりストレスを捨てることができるとはまるで夢のようである。

  さて田中氏は、私たちの目の前に起こる現象は「ニュートラル」であり、その現象を良く受け取るか、悪く受け取るかは私たち自身の判断によるものであるという。私にとって嫌な上司であるが、別の同僚は好きな上司であるといった風景が往々にして見受けられるが、ここでいう好きとか嫌いという判断は主観的なものである。もの静かな上司に対して、ある人は落ち着いている上司と好感をもつが、別の人はハッキリしない上司であると嫌感をもつといった具合である。上司その人はニュートラルであっても、各人の見方・考え方・感じ方によって判断はそれぞれ違いをもって受け止められるものである。
  そこで「あなた自身が、気持ち良く毎日を過ごせること」に意識のカーソルを移してみることが大切なのだと田中氏は指摘する。相手をどんなに変えようと思っても、その人自身が気づかなければ変わらないのだから、自分自身の見方・考え方・感じ方を変化させること。ストレスを捨てるかどうかは私次第であるとの意識が大切なのだという。

■ストレスゼロは身体、ビジュアル、言葉から
 人間には脳と身体の構造上とプログラムの関係から、どうやっても「ストレスを感じることができない姿勢と目線」があり、どうやっても「ストレスを感じることができない心の中の映像」、そしてどうやっても「ストレスを感じることができない言葉や口調」があるとのことである。
  この三つはそれぞれ、「ストレスゼロ姿勢」、「ストレスゼロ映像」、「ストレスゼロ言葉」としてあり、これらを駆使して一人ひとりの個別的なストレスのプログラムを解析し、新しいストレスゼロのプログラミングをすることで、ストレスを消し去ることができるのだという。
  今回の講座ではその一端を体験することができたのだが、あくまでも入り口にすぎないので、さらに本格的に学ぶ場があれば機会を逃さずに参加してみてはいかがだろうか。

■ストレスゼロ姿勢を実践してみよう
 紙面上ではストレスゼロテクニックを紹介することに無理があるのだが、せめてストレスゼロ姿勢だけでも実践できるように、講座で紹介された内容を振り返ってみよう。
  田中氏はストレスゼロ姿勢について、「目線を上にする」「肩をひろげる」「背筋を伸ばす」等々を紹介してくださった。
  私たちが通常、感情が沈み落ち込んでしまうとき自然に目線は下に向かう。そして肩は閉じて、背筋も下に曲がっていることに気づく。田中氏は「目線を下げることによって、脳の中にある感情を感じる部分が刺激される」からだという。
  そこで「目線を上げると、刺激は感情につながる部分から離れて、映像を描く部分に移動する」ことになり、感情が落ち込み続けることができなくなるらしい。これは脳と身体のつながりを理解していればこその分析であり、今日からすぐに実践できるものである。筆者は坂本九さんの「上を向いて歩こう」はストレスゼロテクニックにつながっていたのかと思わず膝を叩いてしまった。
  身体の姿勢が脳を刺激し、感情の動きにまで影響しているというのは当然のことであるが、私たちの暮らしの中で姿勢にまで意識して気を使うことはほとんどないように思う。辛い感情をいつまでも持ち続けるのではなく、前に向いて積極的に生きる力を得てゆくために、まず「目線を上げる」ことから始めてみよう。
  また田中氏はミラノでファッションモデルの歩き方を指導している友人から「ミラノ・ウォーク」を紹介され、以来周囲の人たちの歩き方に気をつけて見るようになったという。「ミラノ・ウォーク」は、膝を伸ばして歩くことで背筋が伸び、目線が上がり、肩もひろがって、まさにストレスゼロ姿勢になるものであるらしい。膝が曲がったままで歩いている人は背筋が伸びないし、目線が上がらず、猫背となって肩も閉じてしまうので、ストレス姿勢になるというので、今日からは意識して「ミラノ・ウォーク」を実践してみてはいかがであろう。

■美しく生きる、豊かに生きるために
 田中氏は2006年にイタリアで九死に一生の列車事故から生還した経験をもっている。このときの体験は田中氏の人生におけるミッションを刻む出来事であったとのこと。なぜ大きな事故に見舞われて死に逝く人と生き残る人がいるのか、なぜ私は生還したのだろうという「死と生」という根本的な問題に正面から向き合って、人生の真の意味を問うことになった。そこに「私の成すべき使命」を見出して、より多くの人たちの人生が豊かで美しくあってほしいと願い世界中を駆け巡っておられる。
  田中氏は、日本に生まれて、和の心と慈しむ心をもち、イタリアで暮らして人生を楽しむ術を体験し、アメリカで夢を求め続けるパワーを学んだという。この三つの世界は、人間が幸せに、より美しく、より豊かに生きるために必要なものではないかと思う。
  ストレスゼロテクニックは、現代日本にもっとも必要なものであるかもしれない。そして田中メソッドともいうべき田中氏の磨いてきた人間科学は、日本とイタリアとアメリカの文化をひとつの人生の中に織り込むことは、日本と世界の未来をつなぐ人間のカタチを示しているようにも思う。
  まずは「目線を上に!」してみることにしよう。