【第102期講座】2009年07月-2009年12月

吉田 太一の講座リポート


■遺品整理屋は天国への引越しのお手伝い
日本で初めて遺品整理専門会社を立ち上げた吉田太一氏は、亡くなられた人の遺品整理について次のように語っている。

「遺品整理業とは、亡くなられた方のご遺品を、遺族に代わって(あるいは、ご遺族と一緒に)整理し、ある物は処分し、ある物は遺族に形見としてお届けし、またある物は、僧侶を呼んで供養(遺品供養)して天国の故人の元へお送りするのが主な仕事です」

吉田氏はこのような仕事を「天国へのお引越しのお手伝い」と呼んでいる。
遺品整理の依頼のほとんどは、別居していた家族や親族が亡くなられたことで遺品を運び出すことが大変で、遺品を整理することに困っている人たちからだという。核家族化や少子化が進み、家族と同居することなく高齢化していく独居老人は、一人で死を迎えることが自然と多くなる。独居老人が死を迎えると遠方から家族が駆けつけて葬儀等に追われるのが常で、遺品整理をする時間をとることが困難な人も少なくないらしい。

そこで吉田氏は「遺品整理のお手伝いをする専門会社をつくろう」と決意する。2002年に日本初の遺品整理の専門会社を立ち上げ、さまざまな現場での苦労はあったものの遺族からの感謝の言葉を励みにすることで、やっと最近は「遺品整理」という言葉が定着してきたという。

当初の吉田氏の悩みは、①誰かの死によってもたらされる仕事で利益を上げるのはよいのか、②遺品の整理は遺族がすべき大切なことではないかというものだった。吉田氏の自信をもってビジネスを拡大していくことができるかどうか、本来は遺族がすべきものを奪ってしまうことにならないかというのは本質的な問いであろう。

吉田氏は遺品整理の現場で感じたことや悩みをブログで発信し始めた。その反響は大きく、多くの人々から遺品整理の社会的使命について示唆され、「どうしてもできない遺族がたくさんいらっしゃる以上、望まれる方には自信をもってサービスを提供していこう!」と決意を新たにすることができた。

吉田氏は「遺品が整理されないと、本当のお別れができない」と指摘する。
独り暮らしをしている老人にとって、家族以上に長く暮らしを共にしているのは遺品の数々である。老人の喜怒哀楽を共にしている遺品が整理されなければ、その家族も本当のお別れをしたことにならないという主張である。だからこそ、遺品を形見、整理、処分、僧侶を呼んで供養してはじめて、すべての遺品を天国に引越しすることができ、家族は本当のお別れができるのだと。

吉田氏は遺品整理が「天国へのお引越し」のお手伝いをするものであるとの信念を固め、社会活動として命の大切さを伝え、孤独死を防ぐ取り組みを推進している。
遺品とは人が生きた証であり、その人が語り得ない「物語」としてのもう一つの人生がある。つまりは、人は生きたようにしか死と向き合うことができないと言われるように、遺品の語る声はその人の人生そのものではないかと思えてくる。

吉田氏が遺品整理の現場で見続けているのは、単に遺品の整理ではなく、その人の人生そのものであったに違いない。
吉田氏は遺品整理を通じて、たくさんの悲喜こもごもの人生の姿を目の当たりにしているが、「自分が死んだとき、あの世で私が天国への引越しのお手伝いをした人たちに逢い、『お前は何を見てきたのか』と言われないように自分の人生をも磨いてゆかなければならないと思います」と語っておられた。

人は一度生まれて、一度死んでいくという真実を受けとめて、よりよく生きることを心がけたいものである。