【第109期講座】2013年04月-2013年09月

白坂 亜紀の講座リポート


■はじめに
銀座の超一流クラブは、政財界のトップクラスの人たちをはじめとして、名だたる文豪や芸術家が足を運び、グラスを傾けながらその時代の物語を綴っている。このような銀座を愛する人々が銀座の格をつくり、銀座のママたちはそれにふさわしい店づくりのために思いを尽くし、智性を磨き、気力と体力を注ぎ込んでいる。
銀座のクラブ稲葉のママである白坂亜紀氏(以下、白坂ママ)は、「銀座のホステスからママになるのは一万人に一人」というほどに大変なことであるといい、さらに一流の名店となるのには相当な運と努力が求められているという。
そして看板をあげたクラブの寿命は6か月とも言われ、日本経済の浮き沈みにも影響を受けながら、現在はかつて3000店あったところから3分の1になっているとのこと。そのなかで優良店はわずか50店ほどであるという。
白坂ママは、こうした厳しい環境にありながらも、銀座のクラブとしての一流の品位を守り、もてなしの文化を大切にして、日本の元気を銀座から発信するという志をもって幅広い活動を展開している。
そして銀座で働く女性を輝かせるために、「女子力」「人間力」を育てることにもエネルギーを注いでいる。外見だけではなく、内面から浮き出てくる女性の美しさと魅力は、教養と感性を磨くことによって得られるもので、その内外の美しさが世の男性たちを癒し、新しい元気を与えることができるのだと、白坂ママの強い思いを感じる。
さらに白坂ママが女性を選ぶときの基準は「笑顔」にあると聞き、人間を観る眼差しに「本物」をみる思いがした。
今回の講座では、銀座を愛する白坂ママの、銀座から発信する「人づくり、まちづくり、未来づくり」について実践にもとづいた内容が縦横無尽に語られ、会場はおおいに湧くこととなった。

■銀座クラブの役割
白坂ママによれば、銀座のクラブには4つの役割があると語っている。第一はビジネスの延長にある接待のサポートをする場。クラブは「第二秘書室」として、必要に応じた場を提供し、そこで自在にリクエスト応えながら仕事のサポートをすることができる。仕事上の秘密は守られ、円滑なコミュニケーションの場としての機能を果たしているという。
第二は、ホームパーティーを演出する場。「俺の店に行こう」と言って大切な人たちをもてなすことができる。そこではママもホステスも家族として、お客さまが大切にしている人たちをもてなして喜んでいただくというもの。
第三は、癒しの場。心身の疲れを癒して、元気になってもらえるように、自信と誇りを取り戻すことのできる場となること。
第四は、情報発信の場。銀座にはあらゆる情報が集まってくるので、クラブで過ごす時間は、時代の最先端をつくる情報や流行などを知ることができる。会社で聞けないことをこっそりと知ることができる場としても銀座のクラブは機能している。
銀座のクラブにはさまざまな視点からの社会的役割があることがうかがえる。

■白坂ママ流「女子力」の磨き方
さて多くの男性諸氏が銀座のクラブで過ごす魅力とは、まずは綺麗な女性にもてなしを受けることである。その女性とはドレスアップをして頭の先からつま先まで心を配って綺麗にしている非日常性の輝きをもち、さらに礼儀作法がきちんとして、知性と教養を感じさせる女性でなければならない。つまり「女子力」をもった魅力的な女性を銀座のクラブで育てているともいえる
白坂ママの「女子力」とは、外面だけではなく、内面から浮き出る美しさが基本としてあって、以下のような項目があげられている。

1)女性の魅力は「笑顔」にある
白坂ママの女性を採用する基準は「笑顔」の美しさにあるという。どんなに美人でも笑顔が美しくない女性がいる。しかしそれほど美人でなくても笑顔の美しい女性は、人の心を素直にさせる力がある。この美しい笑顔こそが女子力の第一であると白坂ママは強調しているのが印象的である。

2)聞き上手
次に大切なことは「聞き上手」であること。よく銀座のホステスは日経新聞をはじめ、さまざまな本や雑誌や読んで、お客さまの話に合わせることができると噂されているが、それはホステスが知識をひけらかすのではなく、お客さまがその場を楽しく過ごすことができるために必要な情報を仕入れているのだという。
いろいろなジャンルの話が飛び交うとき、何の話をしているのかがわかる。その場にふさわしい相づちができている。会話が途切れることなく、気持ちよくおしゃべりをしてもらう。そのためには最低限の知識と情報を必要とする。そのために新聞、雑誌、テレビなどで話題に上がっていることを一応知っていることが大切なのだという。作家の先生が来店するとあらかじめわかっていれば、その著書に目を通しておくのは当たり前のことであり、的を射た感想をもっていることで、喜んでもらう。知識や情報をひけらかすのではなく、聞き上手になるために必要な話題や情報を仕入れることが大切なのだと白坂ママは指摘する。そして聞き上手な女性は、一流のお客さまのもっている人格にふれることができ、自然に幅広い、豊かな人間性が育っていくのだという。

3)マイナスな発言はしない
会話の中で、「**はダメだった。まったくつまらない」などのマイナスの発言は絶対にしないこと。お客さまがそのお店の関係の人だったり、何か関連した人だったりすることがある。気軽に話したとしても、ネガティブな話は決して愉快なものではないので、極力避けなければならない。

4)褒め上手になる
人をよく観て褒めるのは大切な「女子力」となる。人を褒めるときには具体的でなければならない。たとえば「素敵なネクタイですね」と褒めるときも、具体的な色やデザイン、素材やブランドなどの具体的なところまで褒めること。シャツとのバランスやコーディネートが良ければ話題が広がっていくことになる。そこでお世辞になったりしないで、真実を表現することが大切であるという。真に褒めるためには、その人をよくよく観ていなければならない。つまりはその人への関心を示すことが「褒め上手」になる秘訣であろう。

5)褒められ上手になる
反対に、お客さまから褒めてもらったときには、否定をしないで「感謝」し、素直に喜びを表現すること。むやみに否定するのはお客さまをウソツキ呼ばわりしてしまうことになりかねないからだ。褒められたことを否定するというのは、「今あなたが褒めたことは事実ではありません。あなたは本当のことを言っていません」ということになる。せっかく褒めていただいたのであれば、まず感謝して、素直に喜ぶことが大切なのである。

6)よく覚える
お客さまのことを知るために、いろいろとお話を伺うとき、大切なことを覚えておく。そして二回目、三回目のときに関連する話が出てきたときに、すかさず覚えていたことを言葉にして伝えると、話題がふくらんで会話がはずむようになる。お客さまは自分の話したことを覚えてもらっていたことに感激をするようになる。

7)相手のことを思いやる
女子力として何よりも大切なのは「思いやり」の心であるという。思いやりのある言葉、思いやりのある行動、その心遣いが人間として、女性として大切にしなければならないものであると白坂ママは強調する。
白坂ママは、少々行儀の悪いお客さまに対しては「礼儀」を示唆したり、アドバイスしたりするとのことだが、それもまたお客さまへの思いやりと愛情から湧き出るものではないかと思う。

銀座クラブでは、こうした人間力や女子力なくして認められない。白坂ママのもとで働く女性たちは、厳しい競争にさらされながらも、このような人間力や女子力が身についていくという。しかし、これらの人間力、女子力は男女を問わず学び続けなければならないことばかりではないだろうか。

■「デキる男」の条件とは?
白坂ママが銀座を訪れる男性たちをみて、「デキる男」の共通点をいくつか紹介してくれている。ある講演会で「デキる男」の20箇条を並べていったところ、男性たちの表情が曇り、だんだんと下を向いてしまったというエピソードを紹介していた。それだけ世の男性たちは自信を失っているのだろうかと心配しておられたが、本講座では20箇条の中から6つほど紹介をいただいた。

1)早寝・早起き
付き合いがよく明け方まで飲むことはしない。時間を守り、朝早く仕事に取りかかる男性が出世しているという。能力があっても夜更かしをして、飲み明かすという元気な男性も魅力的だが、健康問題で社長になる前に死んでしまったという例も少なくないらしい。とにかく早寝・早起きをして、病気にならず、健康を維持しながら、いい仕事をするというのは「デキる男」の第一条件である。

2)NOと言わない
若い頃は、任された仕事を一生懸命にやり抜くこと。そして死ぬほど働くといった体験が、その後の生き方や仕事への姿勢に大きな影響を与えるという。功成り名を遂げた人の多くは、若い頃に何でも一生懸命にやったという体験を持つ人は多いとのこと。

3)弱い者いじめをしない
自分が出世しても、いばらずに、思いやりを持って人に接することができる。

4)変わらない
相手が誰であっても態度を変えない男性。常にパワーゲームをしているので、自分よりも強い人が現れると態度が一変してしまう男性はNGである。

5)苦境に強い
左遷されてもくさらず、自分の為すべきことを為すという態度がとれる男性。現在を受け容れて、次の手を考え出すことができるかどうか。与えられた仕事に全力を尽くす。

6)変化対応力がある
変化に対する決断が早い。時代の変化に応じてその本質を把握して迅速に対応できる能力を持っていること。

世の男性たちはどこでこのような人間力を養い、磨くことができるのか。それが現代の日本社会に突き付けられている大きな問題ではないだろうか。

■銀座の未来づくり
かつて右肩上がりの成長を遂げてきた日本経済が、1991年のバブル崩壊以降に元気を失い、銀座も大きな影響を受けた。しかし白坂ママによれば、銀座には独特の「銀座フィルター」があり、急激な社会的な変化が起こっても、銀座に出てくるお店にはやがて銀座らしさ現れてくるのだという。
こうした伝統ある銀座の文化は日本にとっても大切なもので、銀座に生きる人たちが結集して、「銀座を守ろう!」という機運が高まっている。
そのなかでも『銀座ミツバチプロジェクト』の注目度は高く、2006年3月28日のミツバチの日にビルの屋上で養蜂場をスタートした。1年目は150キロだった蜂蜜は、2009年には800キロとなった。そして2013年7月に1000キロを達成するほどになっている。
銀座にミツバチが飛び、その範囲は皇居、浜離宮、日比谷公園におよび、また街路樹にも蜜源があるという。この蜂蜜は銀座の飲食店で消費されるようになり、銀座に新しい生態系とその環境ができつつある。
白坂ママをはじめとする飲食業界でも、「ハニハイ」(ハニー・ハイボール)というカクテルを売り出し、多くの人たちにも好反響である。

<銀座ミツバチプロジェクト>http://www.gin-pachi.jp/

白坂ママはこうした公益活動に参加し協力することによって、銀座を愛する人たちの思いを結集することの重要性を強く感じているとのこと。自分の店だけが繁盛すれば良いというのではなく、銀座の文化を大切にする人たちのネットワークを強くすることによってこそ生き残ることができるのだという。
白坂ママは銀座社交料飲協会の理事であり、緑化部長として「銀座里山計画」を推進している。銀座の緑化活動では銀座のママたちも協力し、サクランボを鳥がついばみにやってくるようになり、確実に銀座の生態系は変わってきている。
そして交通事故ゼロを訴えてエコカーを銀座に走らせ、銀座に路面電車の復活や水辺のまちにすること、日本橋を覆う高速道路を地下に走らせ、日本橋がお江戸のシンボルとなるように、江戸城を再建することの提案をしている。さらに銀座を癒しの場として、病院、エステ、ホテルを充実させ、芸術の中心としてゆくこと。飲食業界からは銀座が食材の確保にあたって食の安全、農家との提携によるブランド化といった提案を仕掛けている。
『銀座』のまちづくりと未来づくりのために、グラウンド・デザインをしながら、この銀座にあるクラブの存在意義を明確にすることによって、永く銀座クラブの文化を守ってゆくことができるという視点に立っているのが白坂ママの強い思いである。
だからこそリーマンショックが世界経済を襲って、日本の政治経済もその嵐の中で苦しみ喘ぐ状況にあっても、白坂ママは銀座のために東奔西走するという公益活動を大切にしてきた。そうした活動の結果、お客さまが白坂ママの活動に共鳴共感して、お店をもりあげてくれるようになったという。
「利他」に生きることがすべての発展の原動力であることは間違いない。

■むすびにかえて
白坂ママは「日本人の感性とモノづくり技術とおもてなしは世界に誇るべきもの」であると語気を強くする。
外国人が日本に来て、まず驚くのは「おしぼり」であるらしい。どんな店に入ってもおしぼりのサービスがある。そして「水」をグラスに入れて出してくれること。しかも水が少なくなると、さらに水を注いでくれる。このような細やかな心遣いに感動するのだという。こうしたおもてなしの心は世界に誇るべきものではないかとの指摘である。
そしてモノづくりの技術は、手先の器用な日本人ならではのものである。繊細な料理は、よく切れる包丁がなければならないが、この包丁をつくる技術は実に素晴らしい。また世界一のバーテンダーを支えているのは、質の良い「氷」であるという。良質の氷をつくる技術もまた素晴らしいもので、日本人のこだわりが感性と技術力を磨いている。
白坂ママは、日本人の世界に誇るべき「感性とモノづくりの技術とおもてなし」というものを銀座からは発信したいという志をもっておられるようだ。
それで「銀座なでしこ会」を設立し、講師に参議院議員の中山恭子氏を招き、世界に誇るべき日本人の精神を訴えた。(2013年2月7日)

「日本の文化、心・命・・・」(中山恭子氏講演/銀座なでしこ会)
http://www.youtube.com/watch?v=t-sZJknlfNU

白坂ママのこれからの夢は、「銀座なでしこ会」と共に「銀座大学」構想を展開し、日本の美しさや素晴らしさを銀座から発信することにあるという。
戦後の日本が右肩上がりで成長し発展してきたことに伴い、銀座ではいくつもの伝説や物語があった。これからまた銀座の新しい伝説が始まろうとしているのか、銀座を愛する人たちの活躍に期待するばかりである。
その中心には白坂ママに代表される銀座の『女王蜂』の活躍があることは間違いない。銀座ミツバチプロジェクトに集まる人々に、元気と癒しを与え、新しい銀座の未来をつくるための創造のエネルギーは、白坂ママたち女王蜂のフェロモンの強さにかかっているのかもしれない。
銀座が日本の元気の中心となるように、いよいよ期待が高まってくる。