【第106期講座】2011年10月-2012年03月

川北 義則の講座リポート


 いつまでもお若くダンディなエッセイストの川北義則氏から、バレンタインデーの翌日に「できる女の条件」というテーマでお話が聴けるというのはエスプリが効いている。当日は女性限定というわけでもないので、川北氏の配慮によって「できる女」だけではなく「できる男」も含めた内容について、その場に応じた自在な語りが展開した。そこでは日本が国際情勢のなかで置かれている位置やこれからのトレンド、仕事観、人生観、品格など、私たちが真剣に考えなければならないことを提示してくださった。
  川北氏は「日本には優秀な女性がたくさんいるのだから、もっと活躍していい」と強調しておられた。ドイツのメルケル首相やアメリカのクリントン国務長官など国際的な舞台で活躍する女性を例にあげてその可能性について指摘し、日本の企業500社の取締役で女性は1%程度でしかないことを嘆く。女性は結婚出産などがあってキャリア形成には男性に比べて不利な点もあるが、興味関心のある専門分野でキャリアを積むとか起業するとかして、活躍の場を広げるべきだと熱く語っておられた。
  一方で下品な女性については痛烈な批判が向けられる。電車の中で化粧をする女性に対して、「公衆の面前で化粧するなどというのは論外。みっともないし、見ていて情けなくなる。どうして1時間早く起きて家で準備して来ないのか」とその品性の下劣さに憤慨することしきりである。また職場で感情をあらわにしてしまう女性も「できる女」とは言えず、プライベートな感情を仕事に出すべきではないとの指導もあった。
  加えて「できる女」であるかどうかを知りたければ食事に誘ってみれば良いという。それは食事の場での立ち居振る舞いを見れば、躾や育ちが明らかになるということらしい。
  ひるがえって、川北氏の鋭い舌鋒は男性に向かう。「できる女性が増えているが、ダメな男がもっと増えている」と嘆き、特に礼儀作法を知らない男は話にならないと厳しい指摘が続く。女性をデートに誘うときにいつもの居酒屋ではなく、時には1万円のフランス料理のコースで、明るくて軽い話題をからめた会話を楽しみながら、お洒落な時間をゆっくり過ごそうというのも大切なことで、そういう場を踏んでいない男はダメだと。若き男性諸氏に向けられた厳しい指摘は川北氏のダンディズムから発せられていることが強い説得力をもって迫ってくる。
  男女を問わず、人生の豊かな彩りは多様な世界を知り、新しい次元にチャレンジすることであるという。川北氏によれば「ABCのクラスがあるとする。Aクラスの人はAクラスの人とつき合うが、Bクラスの人は二種類に分かれます。頑張ってAクラスの人とつき合う人は成長しようとしますが、BクラスやCクラスの人とつき合う人は無理をしないので楽な方に行ってしまいますね」と指摘しておられた。たしかに自分よりも格上の人と出会いを求めていくことが自分自身を磨くためには大切なことだと思う。新しい世界にチャレンジすることは勇気がいるもので、多くの人はコンフォートゾーンから脱却しようとはせず、現状に甘んじてしまうことが多い。
  生き残りをかけた若い人たちに向けて川北氏は、「これからはプロフェッショナルの時代であり、職人の時代が始まっている」といった時代認識を披露した。サラリーマンは右肩上がりの高度経済成長時代には年功序列や終身雇用でよかったが、成熟社会に突入している現在は年功序列も終身雇用も成り立たずリストラや倒産の危機がすぐ隣にある。だからこそ「ビジネスマンにはスポーツの一流アスリートのような感覚が求められている」と語り、一人ひとりが専門性を磨いてプロフェッショナルの誇りを持つことが大切であると主張する。つまりは会社を頼りにするのではなく、個人がキャリアを積んで社会に必要とされる専門性を磨くべきだということであろう。

■【川北流・仕事ができる人の7つのポイント】
  ①レスポンス(応答)が速い
  ②行動力がある
  ③自己主張があるか(意思・考え)
  ④問題意識をもっている
  ⑤礼節があり、礼儀作法をわきまえている
  ⑥目配り・気配りができる
  ⑦佇まいが清潔である(品性がある)

 信念のある人は何事にもぶれないものだが、川北氏もまた妥協のないダンディズムが一貫したぶれない生き方を支えているようにも感じた。仕事にもプライベートにも手を抜かず、遊び心があり、決断も早く、行動的で何事にも挑戦的である。常に熱いエネルギーにあふれた川北氏からすれば、年齢が若いにもかかわらずレベルを自ら下げて挑戦しない人々を見るたびにどうしようもなく腹立たしいに違いない。
  グローバル化した社会は価値観の多様化と変化の激しさを増していくばかりで、この流れについていけるかどうかが問われている。川北氏は、新しい世界に挑戦しなければ取り残されてしまうし、日本社会が衰退してしまうとの警鐘を鳴らしている。
  時代の変化に左右されない確固たる信念をもって、時代の変化に即応していく柔軟性は川北氏の主張する「遊び心」「ムダも役に立つ」の中に涵養していくのではないかと、サイン会を終えて颯爽と会場を去るダンディな川北氏の後姿にその印象を残していた。